私の看護観

「家に帰るまでが遠足」

2014.01.09
 看護師 京都府在住 40歳

私の看護観はツアーナースの仕事についてからは、「家に帰るまでが遠足」です。少し笑ってしまいそううな、楽しくやわらかい看護観に思われるかもしれません。けど本当に研修旅行最後の挨拶では無事に家に帰れる事を願って大きな声でみんなに伝えています。医療現場ではいかに苦痛や人生の縁にたっている患者さんに寄り添い、この手でできることを時間と戦いながらするのが精一杯な状況。けど私の出会う10代は元気いっぱい、修学旅行が楽しみな生徒さんです。

なので、修学旅行で楽しい思い出をいっぱい作って持って帰っていくのが普通です。私が最初ツアーナースの仕事を始めた頃、家に帰るまでが遠足です。と言う言葉は、自分自身に向けられていました。初めて会う何百人かの生徒さんに挨拶をして、緊張と不安で本当に私一人で大丈夫?体力持つかな?あと何日だろう?移動が多くかなりハードな工程なのに生徒さんがあまり夜寝てない子が多いとか、病気や怪我につながらないか心配したり。無事に終わるようにと願いつつ、毎回試されてる感覚でした。

修学旅行や遠足、登山にも来れる子達だから安心していると、よく吐く子が多かったり。どうしたら、っという思いは最初は生徒さんと一緒っだたかも。病院ならすぐに着替えることも、手洗いも色んな物品も、休むところもあるのに。お手洗いの場所さえわからず、探すことから始まったり。朝、お世話になったホテルから出発するときに階段を踏み外し頭を打って倒れてる子がいる。と呼ばれ駆けつける。添乗員さんや先生は離れたバスへの誘導や引率でバタバタの状況。団は移動し動いていく。全体の中で生徒の怪我の状態をみて安全、連絡、相談 、連携をおこなっていく。慣れないことが突然起こってくるだけでなく時間がない時が困りました。

生徒さんも突然体調不良を訴える子も。よく聞くと数日前や前日だったり、もっと早くに言えるでしょうという場合が多々あり、先生とコミュニケーションをとり生徒さんの事を察していく。体を大事にゆっくり休めるようにと思っていても旅行中はなかなか難しい。メンタルな事でも体調不良を訴えてくる子も多く、よく話を聞き少し休めたらまた一緒の活動に戻れるようにしていました。けど、中には参加できても終了することができない子もいました。名古屋から京都につき熱を出した小学生がいました。夜中に親御さんが迎えにきたけれど、帰りたくない。平気と泣いていました。よっぽど楽しみにしてたんだと可哀想に思えてならなかったです。生年月日を見るとその子の誕生日でした。両親はどんな思いだったのか。

その子をしっかりと抱きしめてお世話になりましたと言われホットしたように帰られました。ああ、私が預かっていた想いが見えたような瞬間でした。その子の感情も伝わってきて、家族の無事で元気でと言う思いも伝わってきて。家に帰るまでが遠足ですと言う言葉は、思いやりや願いや責任が重なって本当はとても重い言葉に感じられます。私は修学旅行で出会う生徒さんの笑顔を見守りながら元気に家に帰れる事を願い、手で看るもっともシンプルで、けど愛情深い看護を大切にしています。
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